自然観察会 高麗の地盤を読み解く その1
2016年4月9日 土曜日 10;00~12;00
講師 酒本 忠雄 先生 (日高町史 自然篇専門調査委員 越生在住)
参加者 おとな 13名 こども 2名
春爛漫の最高の日和に恵まれて、リンクス高麗川の野外講座の第1弾は上々のスタートを切ることができました。
お招きした酒本先生は高麗川中学校長も歴任され、その後日高町史も執筆された方で、地学のみならず植物にも造詣が深い先生です。
成人式を4回迎えられたとは思えないほどお元気で、素人の集まりである当方のさまざまな質問にも茶目っ気ある語り口で丁寧に答えてくださいました。ありがとうございました。
集合場所の高麗公民館でご用意いただいた資料でまず地質観察の概要を伺い、黄鉄鉱の結晶などの標本やクリノメーターを見せてもらいました。
・岩石には砂や土、灰、生物が固まった堆積岩、マグマに由来する火成岩、熱で変質した変成岩に大きく分けられる。
・古い地層の上に新しい地層が積み重なるのが普通だが、地殻変動でしわが寄ると折れ重なって逆転することがある。根無し山(クリッペ)
・高麗本郷の上の日和田山の斜面に丸い大石があくさんある場所がある。かつて高麗川がその高さを流れていたと考えられる。

その後、徒歩にて巾着田まで移動。あいあい橋下の天神岩は玄武岩(火成岩)ではないかとのこと。ドレミファ橋のたもとで最初の野外講義、川原にある石の観察の方法について学ぶ。
・同じ色のものを集める。
・硬さを調べる。石同士をこすって傷がついた方が柔らかいと区別する。硬度は10段階ある。
・柔らかい順に、滑石、石膏、方解石、蛍石、燐灰石、正長石、石英、トパーズ、コランダム、ダイヤモンド(検索して確認しました)
・(自然のまま乱されていないなら)落ちている石の長い方の方向が川の流れていた方向。

高麗川の川原は主として堆積岩の石が多い。太古の有孔虫の遺骸によるチャート、砂岩、泥岩、石灰岩など。
チャートは黒や赤やいろいろな色がある。日和田山の金刀比羅神社の前の岩や男岩女岩もチャート。
石も2mm以上は礫、2mm以下は砂、1/16mm以下はシルトという。
ドレミファ橋の右側(西側)の崖の地層は珍しいもの。 下の粘土層の上面が浸食された上に礫層が載っている。(スカウア・アンド・フィル構造)飯能礫層と呼ばれている。昔は秩父方面から直接、高麗のほうに荒川にあたる川が流れていたと考えられる。
巾着田では川が外側を削っているので崖になっている。流れの外側が深く、石や砂は内側に堆積する。
高麗川に流れ込む沢が滝のように段差をもって流れ込んでいる。川の流れが速ければ崖に働く力も強くなるので、高麗川が崖を削るスピードが、沢が下に削る込むスピードより早くなり段差ができる。


さらに西側には、あいだに青緑の地層があらわれる。この崖は見事。火山の灰が固まった凝灰岩。八ヶ岳や富士山、箱根、浅間山などの火山灰がつもっている。高根では九州の姶良カルデラからでたガラス質も見つかっている。
日和田山の東側は八高線沿いに高崎まで続く八王子構造線という断層が通っている。外秩父の山地は今も隆起している。
参加者がフリズナの化石を含む石灰岩を発見。高麗でも恐竜の化石はみつからないか、期待が膨らむ。
酒本先生は植物も解説くださる。河原の黄色いキケマンやクサノオウは有毒だとか。参加者がスマホ検索して、レッドリストに載っていると確認。
林のなかには、イチリンソウとニリンソウの群生地が並んでいた。


予定を30分ほど超過して高麗公民館に帰還。その後、近くのたいへん居心地のよい「季節舎工房」の原っぱでお弁当を広げ、流れ解散となりました。
地質、地層の領域で高麗ではまだ見るべきものがあるということで、次回もこの続編を行うことになりました。

地質の研究はこつこつと地道な作業を積み重ねる分野なので、最近は研究者も少ないし、本も売れないと先生は嘆いておられましたが、地味な作業の上で、荒川が実はこちらに流れていたみたいな大胆な推理をする、探偵のような面白さがあるのだなあと感じた次第です。
地質、地形、植生、歴史、建物、、、といろいろな領域で、素人の理解半分、興味半分でフィールド歩きを積み重ねてゆけば、すこしづつ高麗の全体的なイメージが体得されてゆくのではないかと期待しています。
文・写真 岩木隆夫